野菜は、アンモニアも硝酸も吸わない~Haluの世界その8
久しぶりに無肥料栽培の理論について書いてみます。きょうは、「野菜の養分吸収について」です。以前に関連情報をまとめたことがありますが、専門的で難しく書いてしまいました。反省を込めて、あらためて簡潔にまとめてみようと思います。
内容は、タイトルの通り、常識とされる知識をひっくり返すものです。従来の‟教科書”を否定する意図はなく、新しい研究に基づく‟新常識”をご案内するのが目的です。
なぜ‟新常識”という表現を使うのかというと、海外ではこれが周知されはじめているけれど、なぜか日本では全くと言って良いほど知られていないからです。これは、研究者に直接取材して得られた情報です。詳細は以前の記事にまとめてありますので、興味のある方はご覧ください。
では、本題に入りましょう。野菜が大きく育つのために、何が必要だと思いますか? あるいは、何が必要だと教わりましたか? 私は、最初にNPKという三大栄養素のことを教わりました。N=窒素、P=リン、K=カリウム。そのなかでも、とくに「窒素が大事だよ、窒素が」とだれもが、何度も口にするのを聞いてきました。いま思い返すと、まるでマインドコントロールですね。私自身にとって、これはまさに‟呪縛”でした。
しかも、「野菜(植物)は無機栄養しか吸収できない」ということ、さらに、「野菜(植物)は窒素栄養をアンモニアか硝酸の形でしか吸収しない」とも。さあ、この‟旧常識”に対して、新しい研究成果をご案内します。そのうえで、自分の頭で考えてみてください。
研究内容は、森林の土壌に含まれる窒素分がどのような形になっているか、また、植物は、窒素をどのような形で吸収しているか調べる、というものです
【調査結果1~森の土壌に含まれる窒素分の割合】
アミノ酸(有機物):アンモニア(無機物):硝酸(無機物)=1:8:1
つまり、アンモニアが全体の8割を占めているという結果です。それで、植物学者たちは、「植物はアンモニアを吸っている」と判断し、それが一般常識になったそうです。ところが、これに対して、とんでもないデータが発表されました。
【調査結果2~植物が窒素栄養をどのような形で吸収しているかの割合】
アミノ酸:アンモニア:硝酸=8:1:1
この結果をグラフで見たとき、私は身震いしました。実は、植物が無機栄養だけではなく、アミノ酸などの有機栄養を吸収している、という研究成果については以前から日本でも発表されています。論文などを検索すれば、すぐに見つかります。
しかし、最新の研究成果は、無機栄養どころか、ほとんど有機栄養で窒素分を吸収していることを明らかにしているのです。従来の考え方とは真逆ではありませんか。いかがでしょう、この比率を見て、「植物は窒素栄養をアンモニアや硝酸の形で吸収している」と言えるでしょうか? あるいは、「植物は無機栄養しか吸収できない」と言えるでしょうか?
日本の農業は、無機肥料である「硫安(硫化アンモニウム)」や「化成肥料(NPK配合)」が大量に使われています。それでも野菜は大きくなります。では、野菜たちは喜んでそれらを吸収しているのでしょうか。本当はアミノ酸を吸収したいのに、アンモニアや硝酸しかないから、仕方なくそれらを吸収せざるを得ないのではないか。みなさんはどう考えますか?
ところで、アミノ酸を吸収しているのだとすれば、肥料としてアミノ酸を投入すれば良いのではないか。そんな考え方もできます。けれども、冷静に考えてみましょう。そもそもアミノ酸は、一部を除いて化学合成できません。とくに、植物が主に吸収しているアミノ酸はグルタミン(次いで多いのはアスパラギン)と考えられていて、これは微生物の発酵によってつくります。
さらに、いわゆる発酵調味料(うま味調味料)のグルタミン酸は、スーパーに置いてありますが、少量で高額です。とても農業で大量に使用できるものではありません。
それよりも、グルタミンをつくる微生物を畑で増やしたらどうでしょうか。そうです。それこそが、Haluの技術を支えている柱のひとつでもあるのです。
話を整理しましょう。まず、植物は窒素栄養をアミノ酸の形で吸収するのが自然だということ。そして、アミノ酸をつくり出す微生物を畑に繁殖させる。そうなれば、窒素栄養を畑に入れる必要などないのです。
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